ハリネズミの針は毛でできている!抜ける理由も解説

ハリネズミの針の正体は、毛が束になったものです。毛でできているハリネズミの針は定期的に抜け落ち、新しいものと生え変わります。

針が抜け落ちるペースは1日10~20本だといわれます。それよりも多くの針が抜け落ちる場合には、何らかの体調不良をハリネズミが起こしている可能性が高いです。針の抜け落ちが気になる場合には、早めに動物病院を受診して原因を特定しましょう。

 

ハリネズミの針の正体は毛が硬質化したもの

ハリネズミの針は、毛が束になり硬質化したものです。爪や毛と同じタンパク質様の物質「ケラチン」から、ハリネズミの針は作られています。

タンパク質やカルシウムが不足すると、ハリネズミの毛は不自然に抜けやすくなってしまいます。針の健康を保つためにも、ライフステージに合ったフードや補助食をしっかり与えるようにしましょう。

 

体表に約5,000本ほど針は存在する

ハリネズミの鋭い針は、背中をはじめとする体表に約5,000本あります。身体のすべての毛が針というわけではなく、丸まった際に露出する背中部分のみが針となっているのです。

普段背中の針は寝た状態であり、毛並みのようにまとまっています。針を立てていない場合なら毛並みに沿ってハリネズミを触り、抱き上げれば痛くありません。

針を立てている時にはウニのように全方向に対し鋭い針を向けているため、毛並みに沿って触っても痛みを感じます。

針を立てる際には多くのハリネズミが威嚇音を出すため、「フシュッ!」という声を聞いたらハリネズミを触らないようにするのが無難だといえるでしょう。

 

針には定期的に生え変わる「脱針」がある

ハリネズミの針は体毛と同じ成分でできています。人間の髪が毎日一定数抜けて新しいものに変わるように、ハリネズミの針も定期的に生え変わるのです。これをハリネズミの「脱針(だっしん)」と呼びます。

1日あたり10~20本程度が、清浄なハリネズミの脱針本数です。ケージを掃除していると、しばしば抜けたハリネズミの針を見つけられます。正常な針の断面は白っぽく、適度な弾力があり曲げようとすると手ごたえを感じます。

約18ヶ月でハリネズミの針はすべて生え変わるといわれています。針が異常な勢いで抜けたり、一か所だけがハゲたりしている場合には、何らかの被毛トラブルが起こっている可能性が高いです。

1日に40本以上の針が抜ける場合には、早めに動物病院を受診しましょう。

 

ハリネズミに生えている体毛3種を紹介

ハリネズミに生えている体毛は、トゲトゲした針だけではありません。実は以下3種の体毛により、ハリネズミの毛は構成されています。

  1. 体毛
  2. 針と毛の中間部分

以下では、それぞれの体毛の特徴や生えている部位を徹底解説します。

 

①針|非常に固く触ると痛い「トゲ」

ハリネズミがその名で呼ばれる由来が、鋭くとがった全身の針です。ハリネズミの針の特徴や生えている場所は、以下の通りです。

  • 背中とおでこに生えている
  • 長さは2cm程度
  • おでこの針はやや長くお尻に向かうにつれて短くなる
  • 普段は毛並みに沿って生えている
  • 身を守る行為や落下時の衝撃を避けるクッションとして使用される
  • 身を守るときは全身の筋肉を使い垂直に針を立てる など

背中を丸めると逆立てることができるこの針は、身を守るために存在します。攻撃の手段としては使えず、ハリネズミ自身も針を使った突進などの攻撃行為は行いません。

 

②体毛|非常に柔らかくふわふわしている

主にハリネズミのお腹に生えている、柔らかい質感の毛が体毛です。身を守るための針と違い質感はなめらかで、柔らかくふわふわした手触りをしています。

お腹は無防備な箇所なので、人馴れしていないハリネズミでは触るのは難しいです。柔らかいお腹の体毛に触れるようになれば、ハリネズミがなついてくれている証拠だといえるでしょう。

 

③針と毛の中間部分|やや硬めだが触っても痛くない毛

ハリネズミの比毛は、針・中間の毛・比毛で構成されており、中には針でも体毛でもない質感の毛があります。お腹の体毛と背中の針の間に生えている毛は、普通の毛よりも固く太めです。

通常の体毛よりもやや長く、針に近い質感をしているため見たり触ったりすれば一目で違いがわかります。

 

ハリネズミの針は大人と子どもで質感が違う

ハリネズミの針は大人と子どもで質感や長さ、太さなどが異なります。ここでは、ハリネズミの針のライフステージ別の違いについて徹底解説します。

 

大人ハリネズミの針は子どもより長く太い

大人のハリネズミの針は、子どものものより太くしっかりとした質感です。長さは2mm程度であり、子どもの針の1.5倍程度のサイズ感です。

脱針は1日10~20本程度であり、極端な針の抜け落ちは生涯見られません。ハリネズミが大人の針に変わるのは、生後6~8週目以降です。それまでの針は子ども時代のものであり、大人のものより短く強度も低めです。

 

子どもハリネズミの針は短くて細い

ハリネズミの針は生まれた瞬間から存在しているもので、後天的に生えてくる物ではありません。生後30分までの間は無毛ですが、しばらくすると皮膚の下に隠れていた小さな針が少しずつ顔を出してきます。

子どもハリネズミの針や被毛は、以下の過程をたどり成長します。

出生後~1日

皮膚の下に隠れていた針が完全に生え揃う

生後8~13日

針を立てるための威嚇行為を始める

(身体を丸める・威嚇音を出すなど)

生後14日ごろ

針以外の体毛が生え揃う

生後6~8週ごろ

大人の針への置き換わりが始まる

生後6~8週目までのハリネズミの針は、まだ未成熟な子どもの針だといえます。子どもの針は大人の針の3分の2ほどの長さであり、細くしなやかにとがっているのが特徴です。

 

子どもの針は「クイリング」で大人の針に変わる

ハリネズミの子どもの針は、「クイニング」と呼ばれる生理現象ですべて大人の針へと変わります。クイニングが起こるのは生後6~8週前後であり、その期間中は針が1日に40~50本以上ばっさりと抜け落ちます。

抜け落ちた針の下からは大人の針が生えてきているため、その時期のハリネズミは長さが異なった針が混在している見た目になります。

なお、ダニやカビ、ストレスが原因の脱針と違い、クイリングでの脱針はフケなどが見られず毛根もしっかり残っているのが特徴です。経過を観察していればクイニングはおさまり、大人の針への交換は自然に完了します。

 

ハリネズミの針が異常に抜ける時の原因4つ

幼獣のクイニング以外でハリネズミの針が極端に抜け落ちる場合には、対処が必要な脱針を疑いましょう。ハリネズミの脱針が起こる原因は、主に以下の5つです。

  1. ダニが寄生している
  2. 皮膚にカビが発生する「疥癬」を発症している
  3. 免疫系の病気にかかっている
  4. ストレスから脱毛を起こしている
  5. タンパク質やカルシウムが不足している

以下では、各原因を徹底解説します。

 

①ダニが寄生している

ハリネズミにヒゼンダニ(疥癬)が寄生していると、針の極端な脱落を起こすことがあります。ヒゼンダニが寄生したハリネズミには、以下のような症状が見られます。

  • 針が抜け落ちる
  • フケが異常に増える
  • 強いかゆみが起こる
  • 小さな砂のようなダニが体表にみられる など

ハリネズミ同士の接触やフケに触れることで、ヒゼンダニに感染します。特にペットショップからお迎えしてすぐのハリネズミはヒゼンダニを持っている可能性があるため、飼育時の針の異変には注意しましょう。

ヒゼンダニは身体にダニを駆虫する薬を垂らせば駆除が可能です。自然治癒が不可能なため、ハリネズミの針が極端に抜け落ちる場合にはまず動物病院を受診しましょう。

 

②皮膚にカビが発生している

皮膚糸状菌と呼ばれるカビがハリネズミに発生すると、針の極端な脱落を招くことがあります。

ダニ同様に針が抜け落ち、フケが増えて体表でひどい固まりになるのが、このカビに感染したハリネズミの特徴です。しかし、重症化しない限りカビの発生でハリネズミが身体をかゆがることは少ないでしょう。

このカビの厄介なところは、ハリネズミだけでなく人間にも感染するところです。皮膚糸状菌に人間が感染すると、発疹やかゆみなどの症状を起こします。特に免疫が低いお年寄りや子どもなどは、皮膚糸状菌に感染しやすいため気を付けましょう。

皮膚糸状菌にハリネズミが感染しているのが分かったら、まず免疫の低い家族とハリネズミを接触させるのを避けるべきです。その後動物病院を受診し、抗真菌薬でハリネズミの治療を行ってください。

カビはなかなか死滅しないため、根気強く1ヶ月ほど時間をかけ徹底的に治療を行いましょう。

 

③免疫系の病気にかかっている

カビ・ダニの発生後に治療を施しても、効果がない場合にはハリネズミの免疫低下を疑うべきです。免疫低下を起こす疾患には、以下のようなものがあります。

  • 肝不全
  • 腎不全
  • 皮膚の重度な細菌感染 など

脱針を防止するには、隠れた免疫低下を改善する必要があります。なかなかハリネズミのダニ・カビが治療できない場合には、血液検査やレントゲンなどで全身の健康状態を探るべきといえるでしょう。

 

④ストレスから脱毛を起こしている

ハリネズミは臆病でストレスに弱い動物です。以下のような環境の変化をストレスに感じ、脱針を起こすこともしばしばあります。

  • 引っ越しなどでケージの置き場所が変わった
  • 部屋の温度や湿度・明るさが変化した
  • 室内・室外の騒音を不快に感じている
  • 掃除後にケージから自分の匂いが消えた
  • 芳香剤などの匂いを不快に感じている など

ストレスの原因を取り除けば、ハリネズミの脱針が改善することも多いです。神経質で過敏なハリネズミの性格に寄り添い、極力ストレスを与えないよう心がけてあげてください。

 

⑤タンパク質やカルシウムが不足している

タンパク質やカルシウムが不足している時にも、ハリネズミの脱針は起こります。針の抜け落ちと同時に栄養失調の症状が見られる場合には、フードやおやつのバランスを見直しましょう。

タンパク質・カルシウムが多いミルワームなどの生餌を与えれば、ハリネズミの栄養不足は改善する事もあります。ハリネズミの食生活を見直し、栄養をしっかり摂らせて脱針を防いであげてください。

 

ハリネズミの針は毛!定期的に生え変わるのは生理現象

ハリネズミの針は毛でできたものであり、1日に10本程度のペースで定期的に生え変わります。ハリネズミの針が極端に抜け落ちている場合には、以下のような体調不良に陥っている可能性が高いです。

  1. ダニが寄生している
  2. 皮膚にカビが発生する「疥癬」を発症している
  3. 免疫系の病気にかかっている
  4. ストレスから脱毛を起こしている
  5. タンパク質やカルシウムが不足している

なお、子どものハリネズミの針が一気に抜け落ちるのは「クイニング」という生理現象のため、心配はいりません。ハリネズミの針が抜け落ちる原因を理解し、しっかりと対処ができるようになりましょう。

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